大切な時計と大切な気持ち。

大切な時計と大切な気持ち。

大切な時計と大切な気持ち。

今から十年近く前、まだ夫が私の彼氏だった時のことです。
初めて貰った指輪のプレゼントのお返しに、何か一生の記念になるものをと、
購入したのが、イギリス製の懐中時計でした。

 

銀色の、瀟洒なデザインのその時計は、いつも行くタンゴ喫茶のオレンジ色のライトの下で、
本当に綺麗に輝き、彼はとても感動し、初めての涙を私の前で見せてくれました。

 

結婚をしてからも、彼は、何処へ行くにもお守りのようにその時計をいつもポケットに
入れてくれていました。
彼が時計を忘れて外出すると、私の方が心配になったくらいです。

 

しかし、繊細なねじ巻きタイプのものだからでしょうか。
使っているうちに、じわじわと時間が狂いだし、最後は時計として機能しなくなるのです。
彼は、それでもかまわないと、お守りとして、時にファッションとして、
変わらず持ち続けてくれるのです。

 

私は、いつもその時計をこっそり修理に出しています。
購入金額より上回る修理代にもめげず、時間が狂い、機能しなくなる度に、
色んなお店で見積もりを出してもらい、修理依頼をしました。

 

彼は、いつの間にか正確な時を刻んでいる時計に驚いては、また、愛おしそうにネジを巻き、
大切に懐に入れて、今日も会社に向かうのです。

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